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Title : Commentary 1999/12/15

【シュベーベル裁判所長の退任】


 先日、[SUN Special Edition]11月後半に採択された安保理決議として、

というニュースが流れました。また、国際司法裁判所は、12月15日付けで、シュヴェーベル所長が、2000年2月29日付けで、裁判所の構成員を退任する予定であると発表しました。(http://www.icj-cij.org/icjwww/ipresscom/iprLAST.html
 今回は、国際司法裁判所(International Court of Justice; ICJ)のシュヴェーベル氏と裁判所長選挙の方法について、解説を補足します。

 米国出身の シュヴェーベル裁判官は、前裁判所次長だったので前ベジャウィ裁判所長の後を受けて97年に所長に就任しました。裁判所長の任期は3年ですので、2000年2月をもって任期満了となります。シュヴェーベル裁判所長は、これに先立つ99年10月に国連総会において演説を行っています。すなわち、ICJの機能多忙に見合った予算が割り当てられていないこと、今後のICJと他の裁判所との役割分担、ICJがこれまで果たしてきた貢献度について評価した内容です。
 ちなみに現在の次長はスリランカのウィーラマントリー判事です。

■ステファン・M・シュヴェーベル

1929年ニューヨーク生まれ。米国国務省前法律顧問補佐官、ジョン・ホプキンス大学上級国際研究所教授等。
1981年1月15日より裁判所の構成員。1988年2月6日に再選。
1981-1984年、カナダ対アメリカのメイン湾境界画定事件、
1987-1989年、シシリー電子工業会社事件のための特別裁判部裁判官。
1994-1997年、裁判所次長、1997年2月6日より裁判所長。

■国連総会での裁判所長による演説の要約

 1999年10月26日、シュヴェーベル所長は「国連加盟国として当然に払われるべきものが支払われていないことが、機構の生命に最も重大な影響を与えているだけでなく、国際法と国際関係の心臓部である任意の合意と信義誠実の原則を侵害している」と、国連総会でのICJの年次報告において、加盟国代表に通告。「裁判所の財源は、機構のそれと切り離すことはできないし、〜国連の財務機構は、再建されなければならない…」(  以下要点)

  1. 従来よりいっそう多忙になった裁判所
    1998年8月31日から1999年7月31日までの間に、裁判所には、18の新しい係争事件が係属した。裁判所に提起された争点の範囲は、コソボやコンゴにおける戦闘のように、ますます大きな国際危機に関係する問題を含むようになった。裁判所に訴える範囲も、急激に拡がり、現在手続が進行中の事例として、先月のパキスタン空軍機の撃墜について、パキスタンがインドを相手取って申請を提起した事例や、チリがピノチェト事件についてスペインを相手取って、公式に裁判所に提起する意思を表明したことがあげられる。訴えの増大は、人的・財政的資源を拡大するが、この傾向は、裁判所の強制管轄権に広汎に固執する傾向を助長するだろう。

  2. 勧告的機能の新しい方法の探究
    ICJの勧告的機能を、他の国際裁判所によって、拡大して使用することを提案する。重要で抵触しあうような国際法の解釈を最小限にするため、国際法の統一性にとって重要で、かつ他の裁判所の下で事件が生じる国際法の争点については、他の国際裁判所にICJの勧告的意見を要請できるようにすることが不可欠である、と提案する。
    国連機関である国際裁判所において、すなわち、旧ユーゴとルワンダの国際裁判所においては、安保理が勧告的意見を要請するような問題については、いかなる管轄問題も、生じない。ただし、国際海洋法裁判所や、今後、設置予定の常設国際刑事裁判所のような、国連の機関ではない国際裁判所については議論の余地はある。

  3. 第三の千年の最初の世紀についての展望
    裁判所が拠って立つ原則は、普遍的な支持に値する普遍的な原則である。
    裁判所は、第三の千年の最初の世紀に入るにあたって、国際法にとって意味あることは、国際的な無法状態ではなく、国際法に則った国際紛争の平和的解決であり、より強力な当事者の意思によるのではなく、国際的無政府状態ではなく、法の下に支えられる国家主権である。
    まさに閉じようとしている世紀は、飛躍的な科学技術の進歩と、野蛮への逆戻りという、偉大な達成と重大な損失の一世紀であった。それは、航空機の発明と宇宙空間の探査と同様、軍隊のキャンプと難民のキャンプの創出によって特徴づけられる世紀である。
    しかし、今日、創設53年後、ICJは、世界法廷が、国際紛争の裁判解決と国際法の主要部分の発展を通じて、根本的に平和を助長することができるという、満足できる認識をもっている。

■空席に伴う裁判所長選挙について

 裁判所長と次長は、15名の裁判官の互選によって三年の任期で選出されます。所長・次長選挙のための特別の基準を定めた規定はありません。以前は、西欧に偏ることが多かったのですが、最近は、地域的要素も配慮されるようになっています。
 裁判所長は、裁判所のすべての会議を主宰し、業務を指揮し、司法事務を監督する(ICJ規則12条)。裁判所長がその職務を遂行しえないとき(病気・死亡等)、次長がこれを代行します。(以上、杉原高嶺『国際司法裁判制度』有斐閣)

 今回のシュヴェーベル退任については、ICJ規程14条と21条、ICJ規則14条により選挙が行われることになります。

[資料・関連規定]

ICJ規程

第5条【裁判官候補者の指名】
1 国連事務総長は、選挙の日の少なくとも3ヶ月前に、この規程の当事国たる国に属する常設仲裁裁判所の裁判官及び第4条2に基づいて任命される国別裁判官団の構成員に対して、裁判所の裁判官の任務を遂行する地位にある者の指名を一定期間内に国別裁判官団ごとに行うことを書面で要請しなければならない。

第8条【裁判官の選挙】
総会及び安保理は、各別に裁判所の裁判官の選挙を行う。 
第13条【裁判官の任期】
1 裁判所の裁判官は、9年の任期で選挙され、再選されることができる。但し、第1回の選挙で選挙された裁判官のうち、5人の裁判官の任期は3年の終に終了し、他の5人の裁判官の任期は 6年の終に終了する。
4 裁判所の裁判官が辞任する場合には、辞表は、裁判所長に提出され、事務総長に転達される。この転達によって空席が生ずる。

第14条【補欠選挙】
空席は、後段の規定に従うことを条件として、第1回選挙について定める方法と同一の方法で補完しなければならない。事務総長は、空席が生じたときから1ヶ月以内に第5条に規定する招請状を発するものとし、選挙の日は、安保理が定める。

第21条【裁判所長、裁判所次長及び裁判所書記】
1 裁判所は、3年の任期で裁判所長及び裁判所次長を選挙する。裁判所長及び裁判所次長は再選されることができる。

ICJ規則

第2条【選挙された裁判官の任期開始日】
1 3年ごとに行われる選挙において選挙された裁判所の構成員の任期は、構成員が選挙されるための空席が生じる年の2月6日に始まる。

2 任期終了前の構成員の後任のために選挙された裁判所の構成員の任期は、その選挙の日から始まる。

第10条【裁判所長・次長の任期開始日】
1 裁判所長及び裁判所次長の任期は、3年ごとに行われる選挙において選挙された裁判所の構成員の任期がこの規則の2条に従って始まる日に始まるものとする。

第14条【所長、次長の空席の補充】
裁判所長あるいは裁判所次長の空席が、規程21条1項、規則10条1項に基づいて満了する現在の任期期日の前に生じた場合、裁判所は、その任期の残余期間中に、空席を補充されるべきか否かを決定しなければならない。

◆「今日の一言」

 はじめまして、このたび解説記事の担当をすることになったJoと申します。
(自己紹介は、http://www.issue.net/sun/staff.html#Jo へ  m(ゥ)m)。

 SUN初のCommentryという試みでしたが、今回は、簡単に見過ごされてしまいがちな記事にこだわってみました。

 ICJの裁判官は、個人の資格で選ばれ、出身国の思惑を代表してはならない、とされていますが、裁判官の構成は、ICJの判断の形成に大きな影響を及ぼし、国際法と国際関係にもそれなりのインパクトを与えています。

 1996年の「核兵器使用の合法性勧告的意見」が、その好例で、途上国出身の、ウィーランマントリー、シャハブディーン、コロマの三判事は、核兵器の使用がいかなる状況においても絶対違法であるとする説を唱え、一方、核保有国出身のシュヴェーベル判事やヒギンズ判事は、反対の立場から反対意見を唱えるという局面がありました。結局、可否同数で意見が割れたため、アルジェリア出身のベジャウィ裁判所長(当時)の一決に委ねられ、皆さんの記憶にも新しい、あの主文(核兵器による威嚇・使用は、武力紛争で適用される国際法の規則並びに人道法の原則・規則に一般的には違反する)を決定したという経緯がありました。

 ちなみに、この勧告的意見の管轄段階で、ひとり却下の反対意見を唱えていた日本の小田滋裁判官は、現在、3期目・最古参の上席裁判官の地位にあります。

Jo


Updated : 1999/12/15